応用生命科学科では、「生命現象に学ぶ生物機能」を教育の基本理念とし、安心・安全な生物資源を発掘、開発しようとしています。本学科の学生は、有機化学、生化学、分子生物学、細胞学、遺伝学についての基礎を学ぶとともに、微生物から高等動植物にいたるあらゆる生物種の多様な生命現象について学修し、さらにはそれらを基盤とした新しいバイオテクノロジーについても幅広い知識と技術を修得します。私たちは、このような教育を通じて、今後ますます発展することが期待される機能性食品や医薬品開発などの領域で新らたな展開を担うべき創造性豊かな人材の育成を目指しています。

 本学科では、次のような4年間一貫教育のカリキュラム体系をとっています。

カリキュラム体系
1年次 生命化学、生命有機化学、応用動植物学、基礎生命科学 他
2年次 生物分析化学、有機分析化学、動物生殖制御学、遺伝学、遺伝子工学、分子生物学、代謝生化学、酵素化学、食品生化学、食品衛生学 他
3年次 天然物化学、動物発生工学、分子細胞生物学、きのこ生体科学、植物遺伝育種学、応用微生物化学、栄養化学、分子食品科学、食品安全学、専攻研究T 他
4年次 専攻研究U、V

これは生物機能化学実験(3年前期)の一部です。植物細胞の一部を切り出し、カルスを調製します。カルスを組織培養し、新しい遺伝子を導入すれば、遺伝子組換え植物(GMO)を作出することができます。
左の写真は、アカマツ林に発生した野生のマツタケ子実体、右の写真は、in vitro (実験室的)に作出されたマツタケ-アカマツの菌根外観(上)とその横断面 (下)です。私たちのマツタケ人工栽培化研究では、人工シロ(マツタケ子実体が発生する土壌中のコロニー)の作出まで成功しています。
精巣中の精原幹細胞は分化して精子を形成する他、幹細胞として自己複製も行っています。私たちは、この細胞を用いて哺乳動物の遺伝操作ができないか研究しています。この写真は緑色蛍光の遺伝子マーカーを導入したマウス精原細胞を、別の個体の精巣に移植し、移植細胞由来の精子が形成されることを示したものです。
農業分野での作物栽培には光エネルギーは不可欠です。私たちは、「植物の生長や形態形成に及ぼす光質作用の研究」や「植物が合成する機能性栄養成分量を光シグナルにより制御する研究」を行っています。研究成果の一部は、NHK放送「クローズアップ現代(平成17年5月18日放送:科学の光で野菜を作れ)でも紹介されました。上の写真は発光ダイオードの光で育てたそばカイワレを、下の写真は発光ダイオードが発している青、緑、赤の光(光の三原色)を示しています。
私たちは、酵素反応を利用して様々な機能性オリゴ糖(ラクトスクロースなど)を大量生産することに成功しています。これらのオリゴ糖の一部は、特定保健用食品の認可を受けるなど脚光を浴びています。
アミノ酸の発酵生産法は世界に先駆けて我が国で発明された日本発の技術です。そこで主役を演じているのが微生物です(写真左)。しかし、発酵のしくみには未だ多くの謎が残されています。私たちは、アミノ酸発酵菌のゲノム情報を読み解き(中央)、アミノ酸の効率的な生産に大事な働きをする遺伝子変異を突き止め、発酵の全貌を科学的に解き明かしたいと思っています。これまでに見出した有用な遺伝子変異を組み合わせると、生育が各段に速くなった画期的な生産菌が創製できることを見出しています(右)。
キノコがさまざまな生理活性成分を有していることは広く知られています。私たちは、枯れた白樺の表面に発生するカンバタケというキノコが動物の皮膚の炎症を抑制することに着目しました。このキノコから活性成分を単離し、上の写真に示したような化学構造の物質を見出しました。これはこれまでに発見されたことのない新しい化合物です。今後、薬としての利用などが期待されます。
生体中では、様々なタイプのタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)が固有の阻害物質(インヒビター)と絶妙なコンビネーションを組んで生体内恒常性(ホメオスタシス)維持を担っています。私たちは、プロテアーゼやインヒビターを食品や医薬品へ応用することの可能性を探っています。写真は、私たちが現在取り扱っている代表的なタンパク質性システインプロテアーゼインヒビターであるシスタチンのコンピュータグラフィクスです。
南アフリカ原産の木の根から、砂糖の1000倍以上という強力な甘さを持つ天然甘味料”モナティン”が発見されました。私たちは、このモナティンの大量合成方法の開発に取り組んでいます。最新のコンピュータシミュレーションを駆使して反応の制御を行い、最も効果的な合成方法を見つけ出します。上の図は、モナティン類似化合物合成が保護基によって制御できることを示したものです。保護基の違いによって物質の構造に違いが生じ、その結果、異なる反応が起こることがコンピュータシミュレーションで証明されました。

信州大学農学部 応用生命科学科4年 冨田紗織(とみた さおり)

信州大学農学部は大自然に囲まれた場所に位置しており、山々は美しく、空気は澄み、夜空には満天の星が広がります。そのせいでしょうか、学生達は皆のびのびと生活しているように感じます。このような環境の中で勉学に取り組むことができるのは、信州大学農学部の大きなメリットの一つです。私の研究は、植物が食害や病原菌の感染を受けると、自らを守ろうとして揮発性物質を発する現象についてです。この揮発性物質は、周りの植物に対しては警告となるため、このような現象は植物間コミュニケーションと呼ばれています。現在、シソを題材に、警告を受けた植物の細胞内で何が起こっているかについて調べているところです。身近に存在する植物の間でこのようなことが起こっていることに親しみを感じながら日夜実験に取り組んでいます。
信州大学大学院農学研究科 修士1年 高橋康文 (たかはし やすふみ)

私は以前から目標であった大学院に進学し、日々充実した毎日を送っています。研究テーマは免疫機能を調節することにより、アレルギーや花粉症などの症状を改善する新規なオリゴ糖を、酵素を用いて合成することです。大学院に進み、研究は一段と大変になりましたが、その反面学生時代より一歩踏み込んだ内容の濃い実験を行うようになり、実験が成功し、新しいことが発見できたときの感動は学生時代とは比べ物になりません。オリゴ糖は現在多くの種類が、特定保健用食品の認可を受けるなどとても脚光を浴びている素材であり、そのオリゴ糖の研究が出来ることにとてもやりがいを感じています。今後、先輩や後輩達と切磋琢磨しながら自分をより磨いていきたいと思います。

応用生命科学科050527